やさしい光
56歳 男性 (広島県尾道市)

私は焦っていた。まるで磁石でもついているかのように、何台ものクルマが整然と道路に連なっている。見慣れた朝の光景だ。ゆっくりとしか進まない車の群れには、もう慣れっこなはずだった。しかし、その日は状況が違った。社運を賭けたプロジェクトのプレゼン日だったのだ。いつもより早く職場に行かなければならなかったので車線変更を試みるも、誰も入れてはくれない。

そりゃそうだよな、と私はため息をついた。誰だって朝は時間がないものだ。私だけの話ではない。でも、今日のプレゼンのためにがんばってきた日々を思うと、急に激しい虚無感に襲われた。

そんなときだった。サイドミラーに光の点滅が見えたのは。急いで振り返ると、そこには一台のトラックがあった。ライトを照らして、「どうぞ」と合図をしてくれていたのだ。そのやさしい光に、どれほど救われたことか。私は深々と頭を下げて、トラックの前に入り、会社へと急いだ。

親切なトラックのおかげで、無事、時間にも間に合い、プレゼンも大成功だった。小さなことかもしれないが、私には忘れられない出来事となった。

それからも同じようなことが何度かあったが、いつも助けてくれたのはトラックだったように思う。その度に私は、カタチのない何かを受け取った気がした。

※本作品は「トラックにまつわるあなたの心温まるエピソード募集」企画において、投稿されたエピソードを元に作成しています。

トラックにまつわるあなたの心温まるエピソード
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やさしい光
56歳 男性 (広島県尾道市)

私は焦っていた。まるで磁石でもついているかのように、何台ものクルマが整然と道路に連なっている。見慣れた朝の光景だ。ゆっくりとしか進まない車の群れには、もう慣れっこなはずだった。しかし、その日は状況が違った。社運を賭けたプロジェクトのプレゼン日だったのだ。いつもより早く職場に行かなければならなかったので車線変更を試みるも、誰も入れてはくれない。

そりゃそうだよな、と私はため息をついた。誰だって朝は時間がないものだ。私だけの話ではない。でも、今日のプレゼンのためにがんばってきた日々を思うと、急に激しい虚無感に襲われた。

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そんなときだった。サイドミラーに光の点滅が見えたのは。急いで振り返ると、そこには一台のトラックがあった。ライトを照らして、「どうぞ」と合図をしてくれていたのだ。そのやさしい光に、どれほど救われたことか。私は深々と頭を下げて、トラックの前に入り、会社へと急いだ。

親切なトラックのおかげで、無事、時間にも間に合い、プレゼンも大成功だった。小さなことかもしれないが、私には忘れられない出来事となった。

それからも同じようなことが何度かあったが、いつも助けてくれたのはトラックだったように思う。その度に私は、カタチのない何かを受け取った気がした。

※本作品は「トラックにまつわるあなたの心温まるエピソード募集」企画において、投稿されたエピソードを元に作成しています。

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