夜の高速道路
29歳 女性 (大阪府大阪市)

それは数年前のことだった。私はひとり、真夜中の高速道路を運転していた。あたりはしんと静まりかえっており、ただ黒々とした闇だけがそこにあった。こんな時間になるなら、もっと早くに帰ればよかった。そんなちょっとの後悔を振り払うかのように、私はアクセルを強く踏んだ。そして、車線変更をしようとハンドルを軽く右に切った次の瞬間、異変が起きた。ハンドルがまったくきかないのだ。悲鳴をあげる暇もなく、そのまま私のクルマは中央分離帯に勢いよく突っ込んだ。

すさまじい衝撃で、クルマは見るも無残な姿になってしまったが、奇跡的に私は大きな怪我もなく無事だった。救助を呼ぼうと携帯電話を探したが、見つからない。衝突の衝撃でどこかにいってしまったのだろう。近くには電話ボックスもなく、通りがかりのクルマに期待したが、深夜のためほとんど通行もない。夜の高速道路に取り残された私は、不安と恐怖でパニックに陥った。

すると、後方から闇を切り抜けながら、一台のトラックが私のもとへ近づいてきた。「大丈夫ですか!?」。トラックの運転席からひとりの男性が、慌てて駆け寄ってくる。事情を話すと、彼はすぐさま警察に電話をしてくれ、さらには大破したクルマの中から私の携帯電話を探し出してくれた。警察が到着すると彼は状況を説明し、ようやく私が落ち着いてきたところで、何も言わずその場を去っていった。

あのときのお礼は、まだできていない。彼は今、どこの道を走っているのだろうか。青く澄んだ空を見上げながら、ありがとうと心の中でつぶやいた。

※本作品は「トラックにまつわるあなたの心温まるエピソード募集」企画において、投稿されたエピソードを元に作成しています。

トラックにまつわるあなたの心温まるエピソード
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夜の高速道路
29歳 女性 (大阪府大阪市)

それは数年前のことだった。私はひとり、真夜中の高速道路を運転していた。あたりはしんと静まりかえっており、ただ黒々とした闇だけがそこにあった。こんな時間になるなら、もっと早くに帰ればよかった。そんなちょっとの後悔を振り払うかのように、私はアクセルを強く踏んだ。そして、車線変更をしようとハンドルを軽く右に切った次の瞬間、異変が起きた。ハンドルがまったくきかないのだ。悲鳴をあげる暇もなく、そのまま私のクルマは中央分離帯に勢いよく突っ込んだ。

すさまじい衝撃で、クルマは見るも無残な姿になってしまったが、奇跡的に私は大きな怪我もなく無事だった。救助を呼ぼうと携帯電話を探したが、見つからない。衝突の衝撃でどこかにいってしまったのだろう。近くには電話ボックスもなく、通りがかりのクルマに期待したが、深夜のためほとんど通行もない。夜の高速道路に取り残された私は、不安と恐怖でパニックに陥った。

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すると、後方から闇を切り抜けながら、一台のトラックが私のもとへ近づいてきた。「大丈夫ですか!?」。トラックの運転席からひとりの男性が、慌てて駆け寄ってくる。事情を話すと、彼はすぐさま警察に電話をしてくれ、さらには大破したクルマの中から私の携帯電話を探し出してくれた。警察が到着すると彼は状況を説明し、ようやく私が落ち着いてきたところで、何も言わずその場を去っていった。

あのときのお礼は、まだできていない。彼は今、どこの道を走っているのだろうか。青く澄んだ空を見上げながら、ありがとうと心の中でつぶやいた。

※本作品は「トラックにまつわるあなたの心温まるエピソード募集」企画において、投稿されたエピソードを元に作成しています。

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